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瑞々しい水なすと衝撃の人参 南農園 南孝信

2025.5.26

岸和田市で新規就農した南農園。「衝撃の甘さ」と話題の彩誉(あやほまれ)人参と水なすを中心に栽培し、家族や仲間に支えられながら土づくりにこだわっています。南さんが語る農園の熱い思いと今後の展望をお伺いしました。
南農園
南孝信

農業は自分に合った仕事だった

ーまずは新規就農のきっかけをお教えください。
母の実家が長野県にあり、帰省した際に農作業を手伝うことがありました。それがとても楽しくて、親戚から「お前も農業やってみたらどうや?」と勧められたのが最初のきっかけです。また、父方の祖父母も農業をしていた家系だったこともあり、「自分も農業をやってみたいな」という思いが自然と芽生えたのだと思います。
当時は「農地もないし、自分には無理だろう」と思っていたのですが、「借りられる場所があるかもしれないから、一度聞いてみたら?」と勧められて調べてみたところ、大阪府が新規就農者向けの育成事業を行っていることを知り、運よくそのプログラムに参加することができました。実際に学んでいく中で、ますます農業への思いが強くなり、本格的にこの道に進もうと決意しました。
 実家は規模も大きく機械化も進んでいたので、「農業は意外と楽かもしれない」と思っていたんですが、いざ自分で始めてみると、最初から大きな設備を揃えられるわけもなく、手作業の大変さを痛感しました。それでも、もともと体を動かすことが好きで、実はプログラミングなどにも興味があったのですが、やはり自分は自然の中で働くことの方が合っているなと感じています。

支えてくれる仲間は家族のような存在

ー現在はどのような人員構成で経営されているのでしょうか。
現在は私と妻に加えて、社員4名体制で農園を運営しています。繁忙期にはパートスタッフにも手伝ってもらいながら、チームで協力して農作業を進めています。
もともとは「自分ひとりでやっていくんだ」と意気込んで農業を始めたのですが、実際にやってみると、とても一人では回しきれないと感じるようになり、少しずつ人員体制を整えていきました。
いま、一緒に働いてくれているスタッフたちには本当に感謝しています。私にとっては家族のような存在で、年上のスタッフもいますが、どこか“父親”のような気持ちで接している部分もあります。
毎日、支え合いながら農業ができていることが何よりありがたく、逆にスタッフが困っているときには、今度は自分が支えたいという思いで仕事に向き合っています。

メインは水なすと人参

ー南農園では、どういった作物を育てていらっしゃいますか。
現在は約2ヘクタール(約6,000坪)の農地で、水なすと人参を中心に栽培しています。敷地としては人参の方がやや広めです。
水なすは3月頃から収穫が始まり、11月頃まで出荷しています。年間を通じた主力作物で、農園の収益の柱になっています。ハウスと露地の両方で栽培しており、特に「土づくり」には力を入れています。手をかければかけるほど良いものができるという実感があり、より品質の高い水なすを目指して日々取り組んでいます。
一方、人参は冬季限定で収穫時期は12月下旬から3月下旬頃までです。寒さにあたることで甘みが増すため、露地栽培にこだわっています。冬の厳しい寒さが、味に深みを与えてくれるんです。うちで育てている品種『彩誉(あやほまれ)』は、「岸和田の衝撃のにんじん」とメディアでご紹介されたこともあり、その驚くほどの甘さは、冬の露地栽培あってこそ出せる甘さなんです。

ー私も食べた事がありますが、本当に甘いですよね。
そうですね、この冬の寒さにさらして育てる事を我々は『寒締め』と呼んでいます。 この寒さが、にんじんの甘さをぐっと引き出してくれるんです。また冬季には並行してイチゴ栽培にも取り組んでいます。品種は『紅ほっぺ』です。甘みと酸味のバランスがよく、とても人気があります。年間を通じて安定して仕事を提供できる環境づくりも、大切な経営の一部だと考えています。

ー水なすは栽培が難しいと色々な農家の方からお聞きしますが、やはり苦労されましたか?
はい、水なすはとても繊細で、育てるのは簡単ではありません。先ほど土づくりにこだわっているとお話ししましたが、具体的には『バクタモン』という土壌微生物を応用した肥効促進・調整資材を使っています。これを使うことで、水なすの味は格段に良くなるのですが、その分、栽培の難易度もぐっと上がります。

―ただでさえ難しい水なす栽培が、さらに難しくなるわけですね。
そうなんです。私も、最初の年はうまくいかず、かなり苦戦しました。
でもそんな中でなんとか育った水なすを食べてみたとき、その美味しさに本当に驚きました。「こんなに違うのか」と感動して、そこからは試行錯誤の連続でした。
失敗もたくさんありましたが、その分学びも多くて、今ではようやく安定して育てられるようになってきました。

新規就農の苦労を乗り越えて付いた自信

ーご家族が農業をされていたとはいえ、別の地で新規就農というのは色々とご苦労もあったと思います。
たしかに大変さもあったんですが、私は農業を始めたタイミングに恵まれていたと思います。というのも、当時はまだ新規就農者が今ほど多くなく、農地の確保がしやすい時期だったんです。資材の価格も今ほどではなく、大きな設備を整えるコストも抑えられたので、規模を拡大しやすい環境でした。
とはいえ、順風満帆というわけではありません。2018年の台風21号では大きな被害を受けました。借りていたハウスはすべて潰れ、天井が地面に埋まるほどの惨状で、「ゴジラが踏んだんじゃないか」と思うほどの衝撃的でした。栽培も途中で断念せざるを得ず、翌年は何も作れないような状況まで追い込まれました。
そこからやっとの思いで立て直しができたと思った矢先、2020年にはコロナ禍。台風とコロナのダブルパンチで本当に苦しい時期が続きました。
今は物価高の影響で資材コストが大きな負担になっていますが、販売ルートはしっかり動いていますし、「あのときの苦しさを乗り越えたんだから大丈夫」と強い気持ちで農業に向き合えています。

ーそんな南農園さんの農作物は、どちらで購入出来るでしょうか。
販売先は主に地元中心ではありますが、野菜バスなんかにも卸しているので、そういった所でもお求めいただけます。また北花田のイオンでも取り扱いがありますし、今年度中には、岸和田市内に直売所を開設する予定です。より多くの方に、うちの野菜を直接手に取っていただけるよう準備を進めています。

南さんのオススメはこちら とっておきの水なすの食べ方

ー水なすのお勧めの食べ方は何でしょうか。
まずはなんといっても『生』で食べるのが一番のおすすめです。みずみずしくて甘みがあり、そのままでしっかりおいしさを感じられます。塩とオリーブオイルをかけて、サラダ感覚で食べるのもシンプルながら絶品ですよ。
加熱するなら、味噌汁に入れるのも美味しいですが、地元にはちょっと変わった、とっておきの食べ方があります。それが「水なすのボイル 生姜醤油がけ」です。
作り方は、水なすを半分に切って切れ目を入れ、3〜4等分にしたら、沸騰したお湯で15〜20分ほどゆでます。その後、冷蔵庫でしっかり冷やし、食べる直前に軽く水気を絞ってから、生姜醤油をかけていただきます。
特に暑い夏には、この冷やし水なすが地元では「一番のごちそう」と言われるほど人気です。冷たさと水なすの自然な甘みが体にしみわたり、本当に格別ですよ。

ー今後の展望を教えてください。
水なすについては、自分の農園で加工まで行い、漬物などの商品として出荷できる体制を整えつつあります。また、いちご栽培もまだ勉強中ですが、軌道に乗れば観光農園としていちご狩りを楽しんでいただける場所にしたいと考えています。
今年度開設予定の直売所では、お米をはじめとしたさまざまな農産物を販売できるようにしたいですね。少し大きな目標かもしれませんが、日本の食を支える農家の一つとして貢献したいという思いを持って、これからも取り組んでいきたいと思います。

執筆者名

編集部

うまい!泉州編集部

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