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生産者紹介

国際交流につなぐ生涯学習 こがわクック 浅井宣貴

2023.4.7

ひと昔前、「農業を通して生きがいや学びを」という国の方針のもと、都市型近郊農業の新しいあり方が模索されました。その中のひとつとして、農空間を学びの場にするという考え方があり、それを大阪の和泉市で実践しているこがわクックに、現在の取り組みをお伺いしてきました。
こがわクック
浅井宣貴

「農と生涯学習の場」こがわクック

―こがわクックというのは特徴的な名前ですが、どのような事をされているのか教えてください。
この辺りは、15年程前に国の農地整備事業で「農と生涯学習の場」として作られた農業団地です。都市部に居住する人たちに、農業を通して生きがいや学びを提供する、という目的の元つくられました。そしてこの農業団地は、「いずみふれあい農の里」という和泉市の農業体験交流施設、「いずみ小川いちご農園」、そして貸農園である「ふぁっとりあきらら」の3つによって構成されています。
「いずみふれあい農の里」は地域のNPO法人が、和泉市から指定管理を受けて運営している和泉市の施設です。
「いずみ小川いちご農園」は、4軒のいちご農家が1つの組合を作って運営しています。
そして「ふぁっとりあきらら」は関西最大級の貸農園です。
私は「こがわクック」という屋号で、さつまいもやトウモロコシの収穫体験を個人事業でおこなっています。
私自身は仲間と一緒にさつまいもを約2,000~2,500株、トウモロコシを約5,000本栽培しています。ちなみにいちご狩りの方は、1月~5月末までで2~2.5万人の来園があると聞いています。

―農と生涯学習というのは興味深いテーマですね。
生涯学習とは「人々が生涯に行うあらゆる学習」のことを言いますが、僕はもう少し平たい表現で「人々が自分らしさを見つけるための活動」と訳しています。
さつまいもやトウモロコシの収穫体験はその手段で、農業の体験を通して楽しい時間を過ごしたり、リラックスしたりして普段の生活ではつくり辛い「自分の時間」を過ごしてもらいたいです。
また、一般のお客さん以外にも、海外からの教育旅行や会社の研修旅行の誘致も積極的に行っています。先日はエストニアの農業団体が日本と大阪の農業を学ぶためにいらっしゃったり、韓国人高校生の団体が「地産地消」や「もったいないの精神」を学ぶツアーのひとコマとして農園に学習をしにきてくれました。地域の人や企業、そして行政と力を合わせてそういった学習の場を企画することで、この地域の目的を達成すると同時に、ここでしかできない体験を作り上げることを目指しています。

先程私は個人事業として「こがわクック」を運営しているとお話ししましたが、個人事業としては仏画の販売と農業を半々でおこなっていて、兼業農家です。
農業の方でいうと、最初は野菜の収穫体験や販売を中心にしていました。もちろんそれだけでは十分な収入にはならなかったのですが、最近は今ご説明したような様々な企画・イベント開催など、企画による収入がもう1つの柱として定着してきました。今後もそこを発展させ、野菜の直接的な栽培や販売よりも、収穫体験や学習の場を作る事を重点的に取り組みたいと思っています。

―さつまいもとトウモロコシを重点的に栽培されているのには、何か理由があるのでしょうか。
トウモロコシは採りたてが一番美味しいので、その美味しさを知ってほしくてトウモロコシにしました。さつまいもは、甘くて美味しいので子供にとても人気がある野菜だということと、誰に聞いても子供の頃の収穫した体験を覚えていることが理由です。
―たしかに学校や幼稚園でさつまいも堀りをした事があります。
そうなんです。そのことを覚えているということは、楽しかったいい思い出の一つだということですよね。ただ、トウモロコシと違って20日ぐらい寝かさないと甘くならないので、その場で食べていただくことができないのでお持ち帰りしてもらっています。

地域との関わりからはじめた農業

―農業をはじめたきっかけを教えてください。
私はもともと和泉市の出身なんです。大学卒業後東京で4年間大手印刷会社で企画営業職として勤務して、その後フィリピンに語学留学してから、両親が営む仏画のアトリエを手伝うために戻ってきました。それで仏画の海外販売や、写経体験を新たにはじめました。
そういった体験など、現地での事業をさらにスケールさせようと思うと、地域との繋がりというのは必要不可欠なんですね。それで地域の人たちと仲良くなる中で、農業をやってみないかというお誘いもあり、お手伝いをはじめてみました。これが農業に触れた最初ですね。

木の板を使ったバーベキュー!?

―木の板を使った、一風変わったバーベキューができるそうですね。
和泉の木『いずもく※』を使ったバーベキューを提供しています。これは森林保全、間伐材利用、SDGsの一環としてはじめたものです。現在はJT(日本たばこ産業株式会社)のSDGs貢献プロジェクトの支援を受けて、「いずもく SDGs 山林保全ツアー ~過疎地域を潤す環境保全活動 ~」の一環として提供しています。
※いずもく・・・和泉市内で切り出されて和泉市内の製材業者で製材された木材。主にスギとヒノキ。

―美味しく学べるのはいいですね。
このバーベキュー用に、フレンチのシェフの木村信一シェフ(株式会社CHEFIELD KIML’ART)に開発してもらったみかんバターを使った、「舌平目とみかんバター」というメニューはとても美味しいですよ。大阪湾の舌平目を、一晩水に浸けた和泉の木『いずもく』の上に乗せて野菜と一緒に蒸し焼きにします。スギはまろやかに、ヒノキは若干苦みが出ます。両方ともほのかに木の良い香りがしますよ。
いずれはこのみかんバターも販売したいなと思っています。
―一般の方もこのバーベキューを楽しむ事はできるのでしょうか。
もちろんできます。1回のキャパが20人ぐらいなので、10~20人ぐらいでお越しいただくのがいいですね。

将来の国際都市を見据えて

―今後の展望をお聞かせください。
和泉市をプチ国際都市にしたいと思っています。日本の人口が減少していく中で、海外からの移住者は必然的に増えてくると予想しています。そういった将来を考えた時、我々も多様性を認めるような意識改革が、さらに必要になってくると思うんです。そこで、私が企画しているような海外からの教育旅行といったものが、その入り口になるんじゃないかと思います。草の根的な国際交流ですね。
うちの農園に体験に来た方が、同じく体験に来ている外国人と自然に交流が始まる、そんな場にしていきたいと思っています。

執筆者名

編集部

うまい!泉州編集部

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