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生産者紹介

泉州が誇る、世界一甘いギネスの桃 マルヤファーム 松本隆弘

2024.4.26

桃が1個5万円、というとどんなものを想像するだろうか。2015年にギネスワールドレコーズ社より、『もっとも高いブリックス値(糖度)を記録した桃』として認定された桃は、岸和田市の包近(かねちか)町のマルヤファームで栽培された。
マルヤマファーム
松本隆弘

受け継がれてきた屋号

―まずはマルヤファームの歴史をお教えください。
この農園は33歳の時に父から受け継いで、僕が3代目です。父もまだ現役で、家族経営でやっています。うちは代々屋号として、〇の中に弥と書いて『マルヤ』と呼ばれていたんですが、平成10年頃にマルヤファームという名前にしました。以前使っていた弥の字は、曾祖父の弥吉郎の名前からです。今でも桃の箱には、〇に平仮名で『や』と書いた屋号を押印しています。

―ご実家を継いで就農されるまではどうされていたのでしょうか。
それまでは親戚の建物解体業で働いてました。もちろん家業が農家なので、手伝いは子供の頃からずっとしていましたが、結婚を機に農家を受け継ぎました。

―生産物の割合はどのようになっておりますでしょうか。
みかんは1ha、桃は50aです。以前は70aぐらいやっていましたが、少し減らしています。桃の栽培は重労働ですからね。
出荷量で見ると、山梨・長野・福島が全国の6割を占めていますが、実は大阪でも昔から桃の栽培は行われていて、10か所程『桃』が付く地名も残っています。包近町だけでも30軒ぐらいは桃の栽培をしているんですよ。
―それは意外ですね。
大阪や和歌山、岡山などは桃の栽培には割と適した気候なんです。それにこの辺は、桃を育てるには土壌もいい。

1度食べたら忘れられない味、世界一の桃

―それではいよいよ、世界一の桃を作るに至った経緯をお伺いできますでしょうか。
就農当初は、桃の栽培だけでなく販路拡大にも取り組んでいました。近隣府県まで卸売市場をまわったり奔走していたんですが、あまりにも割に合わないなと。
―労働に見合った利益が出る状態ではなかったわけですね。
そんな時偶然、高糖度のりんごが市場で高値で取引されているという話を耳にしました。そのりんごに使用されていたのが、『バクタモン』という土壌改良微生物なんです。これを桃の栽培に取り入れられないかと考えました。
―『バクタモン』といのうは初めて聞く名前ですね。それを使えば甘くて美味しい果物を作る事ができるのですか?
糖度は抜群に高い物が出来ました。23度。一般的な桃は10~12度、13度以上になると規格外の糖度になるので、これは相当甘いと言えます。ただ、しつこい甘さなんです。
―しつこい甘さ?
そう、甘いだけで一つ食べたら十分。次に手が進まないんです。施肥する肥料の量を調整して、絶妙なバランスにたどり着くまで5年ぐらいかかりました。
―相当な試行錯誤を重ねてこられたのですね。

苦難の連続だった世界一への道

その試行錯誤の過程で糖度もさらに上がっていき、ある時どの桃も25.5度になった事がありました。
全部同じ糖度というのはおかしいぞとメーカーに問い合わせたところ、糖度計が振り切れていたんです。
―糖度計が振り切れるという事は、もしかして果物の中で一番甘いものを作られたという事になりますか?
メーカーの話ではこの機械の製造にあたり、日本中のあらゆる果物をサンプリングして計測した結果、糖度25.5度を超える果物は存在しないという結論に至り、上限を25.5度にしているという説明を受けました。まさかこの数値を上回るものがとれるなんて思ってもみなかったそうです。
それから改良し現在は糖度35度までのデータ計測が可能となりました。

ギネス認定を受けた桃

―それからどのようにしてギネス登録へ?
その頃産経新聞の特集に載ったのを、関西テレビのディレクターがたまたま覚えていて、後日夕方のニュースの特集で取り上げられたんです。その辺りからギネスに登録してはどうかと周りから言われるようになりました。
ただ当時のギネス世界記録には、「果物の糖度」というカテゴリーは存在しませんでした。また、ギネスの本社はイギリスですから、英語で書類や質問状が届きます。地元中学の英語教師や岸和田市の農林水産課、大阪府の農林部長、農水省の課長など、さまざまな方の支援があって、2015年に糖度22.2度の、『世界一甘い桃』として世界記録が認定されました。最初にギネス申請をしてから3年が経っていました。

―松本さんたちの働きでギネスに新たなカテゴリが誕生したんですね。しかし、認定されたのは22.2度なんですね。
先程申し上げた30度を超えたという糖度は、光センサーの糖度計でピンポイントで計ったものなんです。ギネスワールドレコード社では、果物の糖度のカテゴリーを制定していく中で、種と皮を除いてすりつぶしたものの平均糖度を、ギネスが指定した研究機関の測定方法で測定すると指定してきたんです。それと同じ方法を、日本の食品分析センターで再現してもらい、2014年8月1日に測定した結果が22.2度だったんです。
―なるほど、市販の糖度計でピッと計るだけではないのですね。
一般的に果物の糖度について語る場合はそうなんですが、ギネスに関しては違いますね。ギネス記録はカテゴリーガイドラインにそった条件で測定したものが記録として認められます。

完熟へのこだわり

―栽培方法以外にも何かこだわりはありますでしょうか。
当然ながら桃は熟している方が甘くて美味しいです。樹上完熟といって、完熟させた状態で収穫してすぐ食べる、これが1番です。ただ、流通を考慮するとこの状態では普通出荷出来ないわけです。適熟出荷といって、市場を通して出荷し、翌朝のセリにかけ、さらに売り場で2・3日は日持ちするようにする。一般的にはこれを「秀品」として区分します。
しかし当園では、より美味しくなるギリギリまで待った桃を、より早くお届けすることをテーマに、出来るだけ完熟に近い状態で出荷するようにしています。

今後の展開

―通販サイトのマルヤファームプラスでは、桃やみかんの予約販売以外にも、健康補助食品にも力を入れておられますね。
おかげさまで毎年桃はネット販売開始20分で予約完売となっています。近年はそれ以外にも農家としての収益基盤強化のため、桃を使った商品の開発にも取り組んでいます。桃の酵素液「桃の妖精」はその一例です。
―さすが有名百貨店で1個2万円で販売された事もある桃、すごい人気ですね。
 今後の展望についても教えてください。

先程説明したように、桃は完熟させた状態で収穫して、すぐ食べるのが1番です。完熟の状態で海外へ輸出する事は出来ないので、インバウンド需要も回復してきた今なら、1シーズン数回だけのプレミアムツアーなどを組んで、その場で採って食べていただくような企画も面白いかも知れません。
―岸和田市の包近に来ないと味わえない、というのは世界に向けて大きなPRになりますね。
 本日はありがとうございました。

Shop Data / 店舗情報

マルヤファーム

公式サイト https://www.maruyafarm-plus.com/

執筆者名

編集部

うまい!泉州編集部

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