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お客様の声に支えられて 創業99年目の井川みかん園 井川雅仁

2024.1.12

大阪湾を一望できる、貝塚にある小高い山。そこに今年、創業99年目を迎える井川みかん園があります。そこで栽培されるみかんは、数々の賞も受賞しており、通信販売は予約で完売の大人気。今回は園主の井川さんにお話をお伺いしました。
井川みかん園
園主 井川雅仁

時代の変化に合わせた経営が、昭和初期からの歴史を紡ぐ

―昭和のはじめ頃からみかんの栽培をされているとの事で、相当な歴史をお持ちのようですが、創業当時から現在に至るまで、ご存じの範囲で井川みかん園の歴史を教えていただけますでしょうか。
みかん作りは私の祖父の時代からで、今年で99年目になります。観光農園としては、父親が45年前にはじめました。私が引き継いでからは、23シーズン目を迎えます。
かつて大阪府の勤労者憩の家という事業で、かいづか山荘というのがこの上にあったんですが、そこからの依頼で観光農園をはじめたと聞いています。私は小学校の頃だったのであまり覚えてはいないんですが。
そこから一般のお客様も来ていただけるように、他の観光農園を視察に行って、山の中に通りやすい道を作ったり、パターゴルフも楽しめるようにしたり、色々試行錯誤したようです。

―パターゴルフですか!?
山の中腹に広い芝生がありますよね。あそこで15年ぐらい前まではパターゴルフも出来るようにしていたんです。芝生自体は30年以上前からありましたので。

みかん狩りとパターゴルフが一緒に楽しめるのは珍しいですね。
でも私の息子が5才か6才ぐらいの時に、芝生で遊びたいと言いまして、それをきっかけに芝生広場にしたんです。今ではレジャーシートを広げてお弁当を食べたり、幼稚園児や小学生が遊んだりと楽しんでいただいています。

たしかにパターゴルフも良いですが、芝生広場の方が時代に合った付加価値なのかも知れませんね。
たまにあの芝生を使って、ヨガのイベントをやったりもしています。

先祖代々の土地への感謝

大阪湾を一望できる、とても良い立地ですが、創業当時から農地は変わりなくこの場所なのでしょうか。
はい、この高台にみかん園がもともとありました。みかん園の前をさえぎるものがなにもないので、天気の良い日には関空や六甲山を見渡せます。立地も良く、外環もできて交通面でも非常に便利になりましたし、芝生と並んでこの絶景は、当みかん園の強みですね。

―立地に関連するお話ですが、みかんの栽培にはやはり環境が大事なのでしょうか。
みかん作りには水はけ、日当たり、風通し、全部そろっていることが重要です。それらが揃っている、この先祖代々の土地にはとても感謝しています。
実は昔この地域は、250軒ぐらいのうちの3分の1以上がみかん農家だったんです。つまりそれだけみかんを育てるにはいい土地なんです。今は後継者不足もあって5、6軒になってしまいましたが。みかん栽培は重労働な割に収入が少ないのが一番の原因だと思います。10ヶ月お世話をして、2ヶ月ほどでシーズンが終わってしまいますからね。
しかし観光農園やっていると、お客様の声が直接聞けるので、美味しかったという声や笑顔で、次年度以降のやる気に繋がって続けられています。それとうちは高台の斜面なので、作業はとても大変なものの、水はけが良いという利点もあって良いものを作る事が出来ているのも大きいですね。

井川農園のみかんについて

―そんな井川みかん園さんのみかんの、味の特長も教えていただけますでしょうか。
糖度が高いのはもちろん、ほどよい酸味もあり、そして一番の特徴としては味が濃いことです。味が濃い理由は、やはり土がいいからだと思います。

―せっかくなので、みかん狩りのコツも教えていただけますでしょうか。
まず選び方は、オレンジ色の濃いものがいいですね。そしてきめの細かい、表面の皮がツルンとしたもの。さらに、みかんの軸の反対側の点が小さければ小さいほど良くて。軸は細い方がいいです。軸が細いと身がしまっていて美味しいです。とりたてはフレッシュな味、数日おくと酸味が抜けてまろやかになるので、味の変化を楽しめます。
うちではみかん狩りの際にハサミをお渡ししていますが、上の軸を持ってみかんを同じ方向にくるくる回すと、ハサミを使わなくてもきれい取ることができます。ひきちぎったりすると、そこから菌が入ってみかんが病気になったりするので、綺麗にとっていただけるとうれしいですね。

みかんの知識あれこれ

地域や家庭によってみかんのむき方は違いますが、井川さんはどのように剥かれますか?
私はまず半分に割って、そこから皮をむいて食べていますね。それで、中の白すじは取る人、取らない人いると思いますが、これの取り方にもコツがあります。白い繊維は軸につながっているので、軸の方から取ると、きれいに取ることができます。しかし繊維とじょうのうという果肉が入っている袋部分は、栄養価が高いので食べた方が健康にはいいですね。

私はこの時期みかんをたくさん買い込むのですが、自宅ではどのように保存するのがいいでしょうか。
涼しい所で、積み重ならないようにして置いておくのが一番いいです。みかんとみかんが触れ合わないようにしておくのが大事です。箱買いして、すべてを並べるスペースがない場合は、新聞紙で箱の中にしきりを作るのもいいですね。

充実の加工品

―こちらでは加工品の販売もされていらっしゃいますね。
みかんジャム、ストレートジュースといった加工品を作っています。
このストレートジュースを使って、みかんの食パンも作っています。ただ、ジュースだけだと味にパンチが出ないので、香りの高い皮をピールにしたり、陳皮(ちんぴ)にしたりしてパンに練りこんで使っています。
陳皮というのはみかんの皮を乾燥させたもので、漢方薬の材料にも使われていて、中国では風邪薬として古くから使われていました。

ジャムとストレートジュースは、まちの駅かいづか、水間のカフェ「パサトーレ」等で販売しています。今年は9月ぐらいで完売しました。また色んな場所のマルシェでも出店販売をしています。
そのほか、みかんの成熟の途中で間引かれる摘果(てきか)という未熟なみかんを使って、ドレッシングやビールも作っています。みかんの酸味と香りの強さがドレッシングにピッタリなんです。

―井川さんのみかんは、こちらのみかん狩り以外では、どのようにして手に入れる事が出来ますでしょうか。
スーパーや直売所での販売は一切していなくて、ここでの直売以外では、webサイトからですね。ただし全て予約販売で、今年もシーズンがはじまって1ヶ月程度で完売しました。ありがたいことに、口コミなどで広がって毎年固定で購入してくださるお客様が多いんです。

観光農園という魅力ある仕事

今後の展望を教えてください。
敷地に対して収穫できるみかんの総量というのは、ある程度決まっています。そういった背景もあって、いろいろな楽しみ方をしていただけるよう、付加価値のある商品づくりを目指して、7、8年前から加工にも力を入れています。

観光農園はとても魅力のある、やりがいのある仕事です。お客様を受け入れるための準備はとても大変ですが、それでもやはり、お客様の笑顔を見られたり喜びの声を直接聞けるのは、何よりも活力になります。今後も可能な限り、先祖から受け継いだ観光農園を続けていきたいと思っています。

Shop Data / 店舗情報

井川みかん園

公式サイト http://www.ikawa-mikan.com/

執筆者名

編集部

うまい!泉州編集部

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