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「考える事が楽しい」挑戦し続ける水なす農家 北野農園 北野忠清

2023.2.13

自農園のホームページでも、泉州水なすについてのさまざまな情報を積極的に発信されている北野農園。レシピの紹介や商品開発だけでなく、水なすの歴史の調査・研究にも余念がありません。今回はそんな北野さんの人物像を探るべく、北野農園にお伺いしてきました。
 
北野農園
北野忠清

北野農園のはじまり

―早速ですが、今回は北野農園や北野さん自身についてのお話を中心にお伺いしたいと思います。
まず、北野農園ではいつから水なすを作られているのでしょうか。

水なすは約70年前、創業当時の昭和30年前後から作っています。
僕で3代目なんですが、初代である祖父の時代には水なすの漬物を販売していました。

―流通技術も発達していない当時、漬物とはいえ全国区での展開は難しかったのではないでしょうか。
はい、祖父の世代が水なすを品種改良し衣川水なす(泉州水なすの品種名)を作り、漬物に加工して地元を中心に販売をしていましたが、全国展開できるようになったのはヤマト運輸がクール宅急便の提供をはじめてからです。
現在は流通もさらに発達して、加工しない状態での出荷も可能となりましたが、今度は温暖化などで栽培の難易度はむしろ上がりました。良い土壌を作り、水なすがしっかりと根を張って環境変化に耐えられるように育てていく必要があります。

―お祖父様の代からの農家という事ですが、やはり子供の頃からお手伝いをされていらっしゃいましたか。
子供の頃は、たしかに農業の手伝いはしていましたが、水なすを作っているという認識もないぐらいでしたね。葉物の収穫では、ほうれん草なのか菊菜なのか小松菜なのかの区別もついていませんでした。

IT企業から農家へ

―では農家を継がれたのは、なにがきっかけだったのでしょうか。
大学卒業後は、かねてより興味のあったIT系の会社に入社しました。当時はITバブルの時代で、ベンチャー企業などがたくさん出来て、勢いのあった時代でした。ところが入社して2,3年が経った頃、祖父が体調を崩しました。
それまでは、もちろんいずれは農家を継がなければならないという意識はありましたが、それはある程度年を取ってから、と漠然と思っていました。しかし周りをみると若い人もとてもイキイキと農業をしていて、なぜそんなに熱心に農業をしているのだろうと考えました。そこから、これまで興味のなかった農業に関心を持つようになりました。

―そうしたご経歴もあって、YouTubeやECサイトの充実など、IT方面にも力を入れていらっしゃるのですね。
そして現在は、他に類を見ないぐらい水なすに情熱を注いでおられるわけですが、何がそこまで北野さんを突き動かすのでしょうか。
先人の経験と知識も必要。しかし若い者の勢いも必要。種を撒き、実がなり、また種を取り、次世代に継なぐ。こうした1年サイクルで循環していく農業の世界の圧倒的な奥深さが、僕の心を捉えて離しません。
物事って循環しているんです。水なすの力強さ、生きたいという気持ちががそれを教えてくれました。

食材としての水なす

―さて、北野農園では漬物以外にも商品を展開されていますね。
過去にはフリーズドライにした水なすのお吸い物を、ニューヨークで販売していた事もあります。結構な人気商品でしたよ。
阪神百貨店のロック・フィールドで販売されている、泉州水なすのサラダはうちの農園の水なすです。これも美味しくて、水なすのポテンシャルをロック・フィールドの技術力が引き出してくれた一品です。
僕たちの世代がすべきことは、生でも美味しいい水なすに、新たな加工方法を試行錯誤していくことだと思っています。

―泉州水なすのおすすめの食べ方を教えてください。
漬物以外では、サラダやピクルスにしてもとても美味しいです。
羽倉崎でカフェを経営されている野菜ソムリエの方が考案されたメニューなんですが、水ナスの生ハム巻きオリーブオイルは絶品です。15年程前に考案されたものなんですが、美味しさが評判で、今ではレストランなど色んなところで提供されています。
水なすは洋食との相性も抜群なので、まだまだポテンシャルを秘めていると思います。

新しいことを始めるための種まき

―今後の北野農園の展望を教えてください
北野農園単独というよりは、泉州水なす自体のブランディング、底上げをしていきたいです。
それと、いまの自分がやれることに全力で取り組み、次世代に繋いでいきたい。そのために小学校、中学校、高校にも出向いて、子供たちに農業のことや、経営のことを伝えたりしています。同業の農家さんにも、知識や経験は惜しみなく伝えています。
考えることがめちゃくちゃ楽しいんですよね。新しいことを始めるための種まきが好きで、いつも水なすの事を考えています。ハードルが高ければ高いほど燃える性分なんです。

IT業界からの転身など、意外な一面も語っていただいた今回のインタビュー。北野農園のホームページでは、泉州水なすに関するたくさんのコンテンツを提供されていますので、そちらも合わせてぜひご覧ください。

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執筆者名

編集部

うまい!泉州編集部

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